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ジオパークとは、地質や地形といった大地の遺産を大切にしながら、地球に対する理解を深め、持続可能な発展を目指す地域のことです。地球とともに生きていくための取り組み、と言いかえることができるかもしれません。
大地は自然や文化の土台となるものであり、地球の歴史を教えてくれる重要な証人です。
土佐清水は、このジオパークの考えのもと、地域資源の保全と活用を通して、地域の、そして、社会全体のよりよい未来を目指しています。
ジオパークの歴史
ジオパークは1990年代、ヨーロッパの地質学者たちによって提唱されました。
地球科学的に重要な遺産を保全し、教育や観光に活用する取り組みはやがて世界中に広がり、2015年、ジオパークは、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の正式なプログラムとなりました。
ジオパークはユネスコ世界ジオパークのコンセプトを基に進められており、そのネットワークは世界中に広がっています。
Think globally, Act locally
ジオパークを通じて、地域から地球全体を知り、地球規模で考える。そして、まずは地域で行動していく。
地域の中の小さな取り組みも、世界の仲間たちと一緒なら、それは、大きな力となり、世界全体を変えることになるかもしれません。
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地球の営みに実際に触れ、地球サイズの時間や空間のスケールを体感できるのがジオパークの魅力です。地球目線で、自然や私たち人間の営みを捉えること―それはきっと、よりよい未来を導き出すための、大切な感覚です。
「地球の記憶は未来への道しるべ」
地球の活動がつくりだした地質・地形遺産は、私たちの暮らす惑星「地球」の進化の歴史を教えてくれるもの。
地球の「記憶」のカケラから、大きな時間の流れを感じてみましょう。
きっと、よりよい未来への道しるべとなる大切なことを教えてくれるはずです。
大地の物語を感じよう
地球の営みによってできた大地は、そこに広がる豊かな生態系や私たち人間の暮らしを支えています。私たちを取り囲む様々なものが大地に根差し、相互に複雑にかかわりながら、地域ごとに独自の景観や文化をつくりだしてきました。大地の物語を紐解きながら、その土地らしさを感じてみましょう。
変化する大地で生きる
地球は、大地の変動や人間の営みの影響によって絶え間なく変化を続け、豊かな恵みをもたらしてくれることもあれば、自然災害を引き起こすこともあります。現在、私たちの目の前で起こっている地球の変化は、地球の歴史の中でどのような意味を持ち、私たちはどう向き合っていくべきなのでしょうか?ジオパークを通じて、一緒に考えましょう。
土佐清水の産業や文化、豊かな自然環境やダイナミックな景観など...その背景には、土佐清水の大地と黒潮が関わりあって生み出す物語があります。土佐清水はいかにしてできたか?その成り立ちを一気にみていきましょう。
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1
深い海の記憶 3800万年前~
日本列島がまだ大陸の端にあった時代、海洋プレートの沈み込みによって深い海の底にたまった砂や泥、火山島の一部などが陸側に押し付けられました。こうしてできた地層は付加体と呼ばれ、土佐清水の大地の土台となっています。海洋プレートの沈み込みは今も続いていていて、時に大きな地震を引き起こします。
叶﨑
シマシマ模様の断崖は付加体の地層。深い海の底で、普段しずしずと降り積もった泥と、地震や洪水時に運び込まれた砂とが交互に積み重なってできている。
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2
浅い海の記憶 1700万年前~
日本列島が大陸の端から現在の位置にまで急速に移動していた頃、大地は激しく活動していました。竜串海岸などの名所を含む三崎地区には、活発に隆起していた山地から運ばれてきた大量の砂や泥が浅い海や河川に堆積してできた地層が分布しており、海底地すべりなどの痕跡も数多くみられます。この時代の大地の変動は当時の生き物にも影響を与えていたと考えられています。
竜串海岸
地震や津波によってできた地層が数多く残されており、日本列島が大陸から移動していた時代の、激しい大地の変動を物語っている。
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3
マグマの記憶 1500万年前~
この時代の活発な大地の変動は、現在は火山のない日本列島の太平洋側でマグマの活動を引き起こしました。このマグマは大地を盛り上げ、太平洋に向かって突き出す岬の元となる地形を作ったともいわれています。足摺岬を形作る花崗岩は、そんな時代も終わる頃の1300万年前のマグマが、地下深くで冷えて固まったものです。その後も続く大地の隆起によって、当時のマグマが地表に姿を表しています。
足摺岬
白い断崖はマグマが冷えて固まった花崗岩。この高まりは海中まで続いており、黒潮とぶつかることで好漁場がもたらされている。
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4
暮らしと大地の営み 現在
土佐清水は、現在もプレートの沈み込みによる変動(隆起)や、風化・侵食、堆積といった大地の営みが活発な場所です。そうして形成された多様な大地と黒潮が出会うことで、豊かな漁場や人や文化を運ぶ海流、そして温暖多雨な気候といった恵みが土佐清水にもたされ、独自の暮らしや文化が育まれてきました。
津呂の駄場(海成段丘)
「駄場」とは、大地の隆起と海水面の変化によってできた台地のこと。平野の少ない土佐清水では、貴重な農耕や生活の場となっている。
ジオパークの活動は、大地を耕し、豊かな土地を作ることと似ています。
土地の特徴を知り、しっかり耕してよい土壌をつくることで、芽は力強く育ち、やがて実りを得ることができます。同じように、私たちが住む大地のことを理解して、そこで育まれてきた自然や文化の価値を掘り下げ、共有することで、思いを共有できる仲間ができるのではないでしょうか。
私たちは、そんな仲間とともに、社会が直面する課題を乗り越え、地域の、そして社会全体の持続可能な発展に貢献していきます。
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みつける
見慣れた景色や、ありふれた光景も、ここにしかない特別なものかもしれません。土佐清水の大地や自然、そして私たちの暮らしや文化を、よーく調べ、よーく観察して、宝物を探し出し、磨き上げます。
あつめる
大地が教えてくれる地球の記憶、先人たちが残してきた土地の記憶...これらは未来の道しるべになるものです。ジオパークでは、地域にちらばる情報や資料を集め、体系的に整理し、地域の発展に活用します。
つなげる
豊かな自然や暮らしの土台にあるのが、大地です。これまで地域の中で点在していたもの(あらゆる学問領域や人と人、人と自然など)をジオパークがつなげ、そこから、新たな価値や取り組みを生み出していきます。
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まもる
地球の記憶を伝えてくれる地質や地形といった大地の遺産と、大地を土台として育まれてきた生態系や地域の文化。ジオパークでは、これらを守ることで、土佐清水「らしさ」を未来に継承していきます。
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そなえる
地球の活動は豊かな恵みをもたらしてきましたが、時として、災いをもたらします。ジオパークでは歴史から学び、地球や大地のことをよく知ることで、南海トラフ地震や台風や豪雨などに備え、災害に強いしなやかな地域づくりを進めます。
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つたえる
大切なものを守っていくためには、その価値を「つたえる」活動が必要不可欠。ジオツアーや教育活動、各種広報活動により、地域の価値や地球の記憶を伝えていきます。
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うるおす
地域資源を守りながら、活用することで、伝統産業の復興や新たなビジネスの創出を促します。そして、地域の中で経済活動をはじめ、色々なものを循環させることで、地域の持続可能な発展に貢献します。