解説ページ 浅い海の記憶

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浅い海の記憶(きおく)  1700万年前
-日本列島誕生(たんじょう) のカギ!変な形の石-

古くからの観光名所として知られる竜串(たつくし) 見残(みのこ) し海岸は、三崎層群(みさきそうぐん) という浅い海にたい積した地層(ちそう) でできています。この三崎層群(みさきそうぐん) は、日本列島が大陸から分かれた時代の地層(ちそう) であるため、日本列島の誕生(たんじょう) について知る上で重要な地層(ちそう) です。

基本情報(きほんじょうほう)
地質(ちしつ) 三崎層群(みさきそうぐん)
時代 1700万年前
(前期中新世(ちゅうしんせい)
サイト G07 松崎(まつざき) 落窪(おちくぼ) 海岸G08 千尋岬(ちひろみさき) 見残(みのこ) し海岸をふくむ)G09 竜串(たつくし) 海岸G10 爪白(つまじろ) 海岸G11 弁天島(べんてんじま) G12 三崎断層(みさきだんそう)

範囲(はんい)

土佐清水市中部(三崎(みさき) 地区周辺)

 


三崎層群(みさきそうぐん) がつくる「土佐清水らしさ」

奇岩(きがん) の名所 竜串(たつくし) 見残(みのこ)

竜串(たつくし) 見残(みのこ) し海岸には、変わった形の岩が多くみられます。これらの変わった形の岩には、「(しぼ) (まく) 」や「(はち) 巣城(すじょう) 」などの名前がつけられ、300年以上も昔の江戸時代から観光名所となっています。

 

海の生き物のゆりかご

三崎層群(みさきそうぐん) には、地層(ちそう) をつくる岩石の種類によって(けず) られやすい部分とそうでない部分があります。岩石の(けず) られやすさのちがいによってつくられた、凸凹(でこぼこ) の海底や海岸は、土佐清水に暮らす多様な海の生き物のすみかとなっています。

 


三崎層群(みさきそうぐん) とは?

三崎層群(みさきそうぐん) はどんな地層(ちそう)

三崎層群(みさきそうぐん) は、主に土佐清水市の中部の三崎(みさき) 地区で観察できます。この地層(ちそう) は、浅い海でたまった(すな) やどろが固まった岩石でできていて、(あつ) さはおよそ3000 mもあります。

三崎層群(みさきそうぐん) の下の方は水深200 m※1くらいか、それよりも深い海でたまった地層(ちそう) 、上の方は水深20 m※2よりも浅い海から河口でたまった地層(ちそう) であると考えられています。

三崎層群(みさきそうぐん) は全体に西に(かたむ) いているため、東側でより下の方の古い地層(ちそう) が、西側でより上の方の新しい地層(ちそう) が観察できます。

※1嵐で海が荒れた時に、強い波によって海底がかき乱される深さ。現在の海ではおおよそ水深100 mとされています。

※2晴れた日の穏やかな波でも海底がかき乱される深さ。現在の海ではおおよそ水深20 mとされています。

 

三崎層群(みさきそうぐん) がたまった場所

四国周辺の海底の地形をみてみましょう。高知県沖の土佐湾(とさわん) の海底には、大きなくぼ地があります。

土佐湾(とさわん) の海底のようなくぼ地は、海洋プレートが(しず) () 南海(なんかい) トラフと日本列島との間にいくつもあり、これを前孤海盆(ぜんこかいぼん) と呼んでいます。前孤海盆(ぜんこかいぼん) は、陸地から流れてきた(すな) やどろなどがたい積する場所です。

三崎層群(みさきそうぐん) は、およそ1700万年前の前孤海盆(ぜんこかいぼん) でたまった(すな) やどろでつくられたと考えられています。

 


三崎層群(みさきそうぐん) についてもっとくわしく

日本列島ができた時代の地層(ちそう)

およそ2500万年前から1600万年前、ユーラシア大陸の東の(はし) () けて日本列島が大陸から分かれてきて、現在(げんざい) の形になりました。なかでも、1800万年前から1600万年前の間には、西南日本が40°以上も回転したことがわかっています.

三崎層群(みさきそうぐん) がたい積したのはおよそ1700万年前で、これはちょうど日本列島が急速に移動した時代です。三崎層群(みさきそうぐん) を調べることによって、日本列島が誕生(たんじょう) した当時の様子を知ることができます。

 

三崎層群(みさきそうぐん) からわかる日本誕生(たんじょう) 当時の様子

三崎層群(みさきそうぐん) の中には、地震(じしん) 、津波、海底で起こった地すべりのあとが残っています。また、三崎層群(みさきそうぐん) がたい積した海は、(すな) やどろが大量に流れ込み、生き物が少ない海であったと考えられています。

三崎層群(みさきそうぐん) を調べることで、日本列島が誕生(たんじょう) した当時、西日本の太平洋側では大地の活動が活発であったことがわかってきました。


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参考文献

  1. 奈良 正和, 楠橋 直, 岡本 隆, 今井 悟 (2017) 久万層群と三崎層群: 日本海拡大期の西南日本弧前孤中新統が記録するもの, 地質学雑誌, 123, 471-489.