解説ページ 暮らしと大地の営み

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() らしと大地の(いとな) み ~現在(げんざい)
-土佐清水は現在(げんざい) も大地の(いとな) みが活発な場所-

現在(げんざい) も土佐清水の大地は() り上がり、雨風で(けず) られて、大地の(いとな) みは続いています。土佐清水では、大きく分けて2つの新しい地質(ちしつ) ・地形が見られます。1つは約400〜200万年前の蹉跎層群(さだそうぐん) という地層(ちそう) です。もう1つは、海岸沿() いにある階段状の地形(段丘)で、およそ30万年前から現在(げんざい) もつくられ続けています。

このページでは、新しい時代の大地の(いとな) みについて説明し、大地と生活の関わりについては別のページにて紹介(しょうかい) します。

基本情報(きほんじょうほう)
地質(ちしつ) 蹉跎層群(さだそうぐん) 海成(かいせい) 河成段丘(かせいだんきゅう) 地形など
時代 蹉跎層群(さだそうぐん) : 約400~200万年前(鮮新世(せんしんせい) 後期~更新世(こうしんせい) 前期)
海成(かいせい) 河成段丘(かせいだんきゅう) : 約30万年前~現在(げんざい)
サイト 蹉跎層群(さだそうぐん) : G20 (ぬの) 蹉跎層群(さだそうぐん) G22 大岐(おおき) 蹉跎層群(さだそうぐん) G25 鹿島(かしま)
海成(かいせい) 河成段丘(かせいだんきゅう) : G21 下ノ加江(しものかえ) 河成段丘(かせいだんきゅう) G23 津呂(つろ) 窪津(くぼつ) 海成段丘(かいせいだんきゅう) G24 唐船島(とうせんじま)

範囲(はんい)

土佐清水市全体

 


蹉跎層群(さだそうぐん) : 市街地の発展(はってん) の土台となる約400〜200万年前の地層(ちそう)

市街地の発展(はってん) に役立った地層(ちそう)

土佐清水市街地周辺には、約400〜200万年前の(すな) (れき) でできた地層(ちそう) が見られます。この地層(ちそう) は周囲の地層(ちそう) とくらべて() りやすいため、土佐清水市街地の() め立てに活用されました。

蹉跎層群(さだそうぐん) はどんなところで見られる?

蹉跎層群(さだそうぐん) は、土佐清水市の市街地の周辺でよく見られます。その中でも最もよく観察できる場所が、地質(ちしつ) ・地形サイトにもなっている鹿島(かしま) です。

蹉跎層群(さだそうぐん) 地層(ちそう) は、その下にある四万十付加体(しまんとふかたい) ※1地層(ちそう) と比べてやわらかく、(すな) 地層(ちそう) や数十 cmの丸い(れき) 地層(ちそう) でできています。

土佐清水市市街地以外では、土佐清水市北部の(ぬの) 地区、大岐(おおき) 地区、中央部の千尋岬(ちひろみさき) で観察することができます。

※1四万十付加体については、「深い海の記憶」をご覧ください。

 

蹉跎層群(さだそうぐん) の積み重なり

蹉跎層群(さだそうぐん) は、下から鹿島層(かしまそう) 旭層(あさひそう) 以布利層(いぶりそう) と名前が付けられています。鹿島層(かしまそう) 旭層(あさひそう) 潮間帯(ちょうかんたい) ※2から浅い海にたまった(すな) (れき) 地層(ちそう) 以布利層(いぶりそう) は川や海底谷(かいていこく) などの強い水の流れがある場所でたまった(れき) 地層(ちそう) です。

蹉跎層群(さだそうぐん) 分布(ぶんぷ) を見てみると、四万十付加体(しまんとふかたい) の上にうすくたまっている様子がわかります。

足摺岬(あしずりみさき) 周辺の海底の地層(ちそう) 調査(ちょうさ) によると、蹉跎層群(さだそうぐん) がたまった時代は九州と四国が陸続きで、宮崎県の日向市あたりから土佐清水市あたりにかけて海岸が続いていたと考えられています。蹉跎層群(さだそうぐん) はそんな海岸の近くにたまった地層(ちそう) かもしれません。

※2満潮の時の海水面と干潮の時の海水面の間の部分

 


海成(かいせい) 河成段丘(かせいだんきゅう) : 大地が() り上がっている証拠(しょうこ)

生活と関わりの深い海成段丘(かいせいだんきゅう)

足摺半島(あしずりはんとう) に残される海成段丘(かいせいだんきゅう) は、土佐清水の大地が() り上がっている証拠(しょうこ) 。平らな段丘面(だんきゅうめん) は、この地域では古くから「駄場(だば) 」と呼ばれており、畑や水田、家を建てる土地として使われてきました。

海岸の近くにも、約6000年前から現在(げんざい) もつくられ続けている平らな土地があり、海食台(かいしょくだい) とよばれています。ここでは変わった形の石が見られる海岸を散策(さんさく) したり海の生き物を(さが) したりして楽しめます。

海成段丘(かいせいだんきゅう) が見られるところ

土佐清水の海岸には、階段(かいだん) のように平らな面と(がけ) がくり返し見られる地形があります。この階段(かいだん) のような地形は多いところで4(だん) みられます。この階段(かいだん) のような地形は上からそれぞれ約30万年前、約20万年前、約13〜12万年前、約6000年前〜現在(げんざい) につくられました。

 

海成段丘(かいせいだんきゅう) の成り立ち

海成段丘(かいせいだんきゅう) の成り立ちには、地球全体の気候の変化による海水面の上下と、地面の() り上がりが大きく関わっています。

足摺半島(あしずりはんとう) はおよそ70〜60万年前から() り上がり続けています。その間、地球の気候はおよそ11万年ごとにあたたかい時代と寒い時代をくり返しています。

あたたかい時代は、海面が上がって、海岸を波が(けず) って平らな地面ができます。寒い時代になると海面は下がりますが、その間も足摺半島(あしずりはんとう) はずっと() り上がり続けています。

もう一度あたたかくなると海面はまた上がりますが、足摺半島(あしずりはんとう) () り上がり続けているため、前にできた平らな地面は海面よりもずっと高い位置にあります。そうすると、海面に近い低い土地がまた(けず) られて、より低い段丘面(だんきゅうめん) ができます。

このように足摺半島(あしずりはんとう) () り上がり続ける一方、あたたかい時代と寒い時代がくり返すことで、階段(かいだん) のような地形ができます。


 

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参考文献

  1. 小池 一之, 町田 洋 編 (2001) 日本の海成段丘アトラス 日本III [中国・四国・九州・南西諸島], 東京大学出版会
  2. 満塩 大洸, 西川 徹 (1992) 高知県西南部の第四系, 特に中位段丘, 第四紀, 24, 1-17.
  3. 岡村 行信 (1998) 豊後水道南方海底地質図説明書, 20万分の1海洋地質図49「豊後水道南方」説明書, 通商産業省工業技術院地質調査所, p. 28.
  4. 太田 陽子, 小田切 聡子 (1994) 土佐湾南西岸の海成段丘と第四紀後期の地殻変動, 地学雑誌, 103, 243-267.