解説ページ マグマの記憶

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マグマの記憶(きおく)  1300万年前
―日本でココだけの特別な岩体―

四国最南端(さいなんたん) 足摺岬(あしずりみさき) は、足摺岬花崗岩体(あしずりみさきかこうがんたい) という地下深くでマグマが固まってできた岩石からなる岩体です。この足摺岬花崗岩体(あしずりみさきかこうがんたい) には、ラパキビ花崗岩(かこうがん) という、日本では足摺岬(あしずりみさき) 以外で見られないめずらしい岩石がふくまれています。

基本情報(きほんじょうほう)
地質(ちしつ) 足摺岬花崗岩体(あしずりみさきかこうがんたい)
時代 約1300万年前
(中期中新世(ちゅうしんせい)
サイト G13 赤碆(あかばえ) 白碆(しろばえ) 黒碆(くろばえ) G14 足摺岬(あしずりみさき) G15 白山洞門(はくさんどうもん) G16 女城鼻(めじはな) G17 唐人駄場(とうじんだば) G18 臼碆(うすばえ)

範囲(はんい)

土佐清水市南部(足摺岬(あしずりみさき) 周辺)

 


足摺岬花崗岩体(あしずりみさきかこうがんたい) がつくる「土佐清水らしさ」

足摺岬(あしずりみさき) 断崖(だんがい) と集落

足摺岬(あしずりみさき) をつくる高さ50 mの断崖(だんがい) は、足摺岬花崗岩体(あしずりみさきかこうがんたい) からなります。この花崗岩体(かこうがんたい) は、足摺岬(あしずりみさき) 松尾(まつお) などの集落の土台となっています。

 

日本本土で黒潮(くろしお) が最初に接岸する岩体

日本本土で黒潮(くろしお) が最初に接岸するのは、土佐清水市の臼碆(うすばえ) という場所です。臼碆(うすばえ) の海岸は、足摺岬花崗岩体(あしずりみさきかこうがんたい) でできています。臼碆(うすばえ) では、花崗岩(かこうがん) が広がる荒々(あらあら) しくも雄大(ゆうだい) な景観を楽しむことができます。

 


足摺岬花崗岩体(あしずりみさきかこうがんたい) とは?

地下深くでマグマがゆっくりと固まった岩体

岩石を高い温度まで温めると、氷と同じようにとけてしまいます。岩石をおよそ1000℃まで温めてドロドロにとけてしまったものをマグマと言います。

マグマが地表にふき出すと、火山をつくります。一方、マグマは地表にふき出すことなく、地下でゆっくりと冷えて固まってしまうこともあります。

足摺岬(あしずりみさき) をつくる花崗岩(かこうがん) という岩石は、このようにマグマが地表に() き出さないで地下でゆっくりと冷えて固まった岩石です。

 

卵型(たまごがた) 模様(もよう) のあるラパキビ花崗岩(かこうがん)

足摺岬の花崗岩(かこうがん) のなかには、卵型(たまごがた) 模様(もよう) がある花崗岩(かこうがん) があります。この花崗岩(かこうがん) はラパキビ花崗岩(かこうがん) とよばれています。「ラパキビ」とはフィンランドの言葉で「(くず) れやすい岩」という意味です。

ラパキビ花崗岩(かこうがん) は日本では、足摺岬(あしずりみさき) 以外で見られない※1岩石です。

海外で知られているラパキビ花崗岩(かこうがん) のほとんどは、10億年以上前の遠い昔にできました。およそ1300万年前にできた足摺岬(あしずりみさき) のラパキビ花崗岩(かこうがん) は、世界一新しいラパキビ花崗岩(かこうがん) の一つといえます。

※1卵型の組織をもつ花崗岩は山陽地方や飛騨山脈などで報告があります。しかし、化学組成でAタイプという花崗岩に分類されかつ卵型の組織を持つという、ラパキビ花崗岩の定義に当てはまることが確認されているのは、日本では足摺岬花崗岩体のみとなります。

 


足摺岬花崗岩体(あしずりみさきかこうがんたい) についてもっとくわしく

ラパキビ花崗岩(かこうがん) のでき方

ラパキビ花崗岩(かこうがん) 卵型(たまごがた) 模様(もよう) を見ると、中心と外側で色が違う場合があります。卵型模様(たまごがたもよう) の中心部はカリ長石(ちょうせき) 、外側の部分は斜長石(しゃちょうせき) という鉱物(こうぶつ) ※2でできています。

マグマが冷えてかたまりかける時、その内部はとけたマグマと冷えて固まった鉱物(こうぶつ) がシャーベットのように液体(えきたい) 固体(こたい) がまざり合った状態(じょうたい) になります(①)。足摺岬花崗岩体(あしずりみさきかこうがんたい) では、マグマがシャーベットのような状態(じょうたい) の時に、別の熱いマグマとまざり合ってしまいました(②)。

すると、すでに固まっていたカリ長石(ちょうせき) の表面がもう一度とけて、後からやってきた熱いマグマと反応(はんのう) してしまいます(③)。これが固まったものが卵型模様(たまごがたもよう) の外側の斜長石(しゃちょうせき) です(④)。

※2岩石をつくる小さな結晶

 
 

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参考文献

  1. Larin, A. M. (2009) Papakivi Granites in the Geologial History of the Earth. Part 1, Magmatic Associations with Rapakivi Granites: Age, Geochemistry, and Tectonic Setting. Stratigraphy and Geological Correlation, 17, 235-258.
  2. 村上 允英, 今岡 照喜 (1985) 高知県足摺岬のラパキビ花崗岩, 地質学雑誌, 91, 179-194.
  3. 吉倉 紳一 (2012) 第10章 足摺岬のラパキビ花崗岩, 鈴木 堯士, 吉倉 紳一 編, 最新・高知の地質 大地が動く物語, (株)南の風社, 174-199.