【解説 ページ】
マグマの記憶 1300万年前
―日本でココだけの特別な岩体―
四国最南端 の足摺岬 は、足摺岬花崗岩体 という地下深くでマグマが固まってできた岩石からなる岩体です。この足摺岬花崗岩体 には、ラパキビ花崗岩 という、日本では足摺岬 以外で見られないめずらしい岩石がふくまれています。
足摺岬花崗岩体 がつくる「土佐清水らしさ」
足摺岬 の断崖 と集落
足摺岬 をつくる高さ50 mの断崖 は、足摺岬花崗岩体 からなります。この花崗岩体 は、足摺岬 や松尾 などの集落の土台となっています。


日本本土で黒潮 が最初に接岸する岩体
日本本土で黒潮 が最初に接岸するのは、土佐清水市の臼碆 という場所です。臼碆 の海岸は、足摺岬花崗岩体 でできています。臼碆 では、花崗岩 が広がる荒々 しくも雄大 な景観を楽しむことができます。


足摺岬花崗岩体 とは?
地下深くでマグマがゆっくりと固まった岩体
岩石を高い温度まで温めると、氷と同じようにとけてしまいます。岩石をおよそ1000℃まで温めてドロドロにとけてしまったものをマグマと言います。
マグマが地表にふき出すと、火山をつくります。一方、マグマは地表にふき出すことなく、地下でゆっくりと冷えて固まってしまうこともあります。
足摺岬 をつくる花崗岩 という岩石は、このようにマグマが地表に噴 き出さないで地下でゆっくりと冷えて固まった岩石です。

卵型 の模様 のあるラパキビ花崗岩
足摺岬の花崗岩 のなかには、卵型 の模様 がある花崗岩 があります。この花崗岩 はラパキビ花崗岩 とよばれています。「ラパキビ」とはフィンランドの言葉で「崩 れやすい岩」という意味です。
ラパキビ花崗岩 は日本では、足摺岬 以外で見られない※1岩石です。
海外で知られているラパキビ花崗岩 のほとんどは、10億年以上前の遠い昔にできました。およそ1300万年前にできた足摺岬 のラパキビ花崗岩 は、世界一新しいラパキビ花崗岩 の一つといえます。
※1卵型の組織をもつ花崗岩は山陽地方や飛騨山脈などで報告があります。しかし、化学組成でAタイプという花崗岩に分類されかつ卵型の組織を持つという、ラパキビ花崗岩の定義に当てはまることが確認されているのは、日本では足摺岬花崗岩体のみとなります。


足摺岬花崗岩体 についてもっとくわしく
ラパキビ花崗岩 のでき方
ラパキビ花崗岩 の卵型 の模様 を見ると、中心と外側で色が違う場合があります。卵型模様 の中心部はカリ長石 、外側の部分は斜長石 という鉱物 ※2でできています。
マグマが冷えてかたまりかける時、その内部はとけたマグマと冷えて固まった鉱物 がシャーベットのように液体 と固体 がまざり合った状態 になります(①)。足摺岬花崗岩体 では、マグマがシャーベットのような状態 の時に、別の熱いマグマとまざり合ってしまいました(②)。
すると、すでに固まっていたカリ長石 の表面がもう一度とけて、後からやってきた熱いマグマと反応 してしまいます(③)。これが固まったものが卵型模様 の外側の斜長石 です(④)。
※2岩石をつくる小さな結晶




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参考文献
- Larin, A. M. (2009) Papakivi Granites in the Geologial History of the Earth. Part 1, Magmatic Associations with Rapakivi Granites: Age, Geochemistry, and Tectonic Setting. Stratigraphy and Geological Correlation, 17, 235-258.
- 村上 允英, 今岡 照喜 (1985) 高知県足摺岬のラパキビ花崗岩, 地質学雑誌, 91, 179-194.
- 吉倉 紳一 (2012) 第10章 足摺岬のラパキビ花崗岩, 鈴木 堯士, 吉倉 紳一 編, 最新・高知の地質 大地が動く物語, (株)南の風社, 174-199.