竜串のサンゴ 白化速報
足摺宇和海国立公園の海中資源・筆頭といえば、サンゴ。
鮮やかさは少なくとも、小さな生き物たちのゆりかごとなり、豊かな生物相の土台です。
そのサンゴが今、近年まれにみる規模で白化しています。
一見美しくも見える、まっしろなサンゴ。
あしうわの海のシンボルともいえるサンゴは、大丈夫なのでしょうか?
竜串のサンゴ 白化状況
竜串湾を知り尽くす生き字引の竜串観光汽船の竹葉さんは、40年以上にわたり竜串湾でグラスボートを運航し、サンゴの保全活動にも携わってきました。
竹葉さんによると、2010年ごろにもサンゴの大規模白化はあったそうですが、見残しのシコロサンゴは見たことがない規模になっているのだとか。
どういう状況なの、2024年8月末から9月にかけての動画をご覧ください。
<動画>竜串湾(桜浜)
<動画>竜串海中(海域公園)
<動画>見残し湾シコロサンゴ
大きく育った見残しのシコロサンゴは、冬の引き潮時には水上に出てくるほどになっているため、露出する部分は死んでしまっているのだとか。
上の動画では中心部が黒っぽく、一見生きている部分かな?と思ってしまいますが、どうやらコケだそうで、見かけ以上に白化状況はかなり進んでいます。
サンゴの白化とは
サンゴの白化は何が原因で、どういうことが起こっているのでしょう?
足摺宇和海国立公園の海中資源を長らく研究・観察し続けてきた黒潮生物研究所の代表でもあり、サンゴの専門家の目崎所長に聞いてみました。
Qサンゴの"白化"とは、何が起きているのでしょう?
Aサンゴの色の素でもあり、栄養供給源でもある「褐虫藻」の密度が減少し、白い骨格が透けて見えてしまっている状態です。
褐虫藻は、サンゴの体の中に住む代わりに、光合成をして栄養を分け与えている「共生藻」。褐虫藻の密度が著しく低下した状態のサンゴは、栄養が圧倒的に足りなくなっています。
Q白化する原因は何ですか?
A2024年夏の白化は、高水温からくるものです。
他にも、海水温が低すぎる場合や、淡水や土砂が入り込むなど、サンゴにストレスがかかるような状況で白化することが確認されています。
Q出て行ってしまった褐虫藻は、どうなっているのでしょう?
Aもともと海水中に褐虫藻は存在しています。サンゴから出たものも、元気であればサンゴの体外で生きています。急激な白化の場合には、海中が少し濁ることがあります。しかし、白化すると褐虫藻にも光合成のための色素がなくなったり、形がいびつになったりとダメージがあります。そのため、体外にでることなくサンゴの中で死んでしまう褐虫藻もあります。
Q白化したサンゴは、もう死んでいるのでしょうか?
A白化してもすぐに死ぬことはありませんが、元気いっぱいではありません。
白化したばかりのサンゴを海中でよく観察すると、骨格の表面に触手をもった小さなイソギンチャクのようなものが見られます。「ポリプ」と呼ばれるサンゴの体の一部です。サンゴは、ポリプを使って自分で餌をとることもできるのですが、多くの栄養を褐虫藻から得ているため、白化してしばらくすると栄養などが不足してサンゴは死んでしまいます。
サンゴの海を守る、ということ
白化してしまったサンゴに対して、人間ができることはほとんどありません。
サンゴが無くなってしまった海に、人ができることも限られています。
今は、海水温が下がるよう祈るしかないのでしょうか?
視点を変えて、白化を防ぐことを考えてみましょう。
例えば、竜串は海水浴場として今夏も多くのお客さんが訪れていました。しかし、一部の日焼け止めに使われている成分が、サンゴの白化を引き起こす、ということも指摘されています。実際にこれが原因で、ハワイでは一部の日焼け止めの使用禁止が決まりました。
サンゴの海を守ること。
それは、たとえば日焼け止めの成分表をみることから始められることなのです。
竜串湾のサンゴ白化 続報
2024.9.24 更新
竜串湾の生き字引、竜串観光汽船の竹葉さんから続報が届きました。
竜串と見残しの港をそれぞれ水温計で測ったところ、現在【26度前後】まで落ち着いてきているとのこと。
気温もようやく秋めいてきたので、このまま順調に気候が落ち着けば、サンゴの回復も望めそうです。