土佐清水ジオパーク 市民公開講座
主催: 土佐清水ジオパーク推進協議会
土佐清水ジオパークは日本ジオパークの一員として2021年9月25日に新規認定されました。このたび認定一周年を迎えるにあたり,市民の皆さんに土佐清水ジオパークについて改めてご理解いただくため,土佐清水をこよなく愛するお二人の有識者に御登壇いただき、土佐清水ジオパークの価値や重要性、魅力、将来に向けての展望について、大いに語っていただきます。
また,関連行事として「弁天島の地層観察*」「土佐清水ジオパーク助成研究成果報告会」も併せて開催します.多数のご参加をお待ちしています。
* 「弁天島の地層観察」は事前申込みが必要です。
※申込み不要
土佐清水の地層からひもとく激動の地球史
西南日本の大地は,かつてアジア大陸の東端をなしていました.それが大陸から分離した後,急速に回転しながら南下して現在の位置に達しました.今から1800万年〜1600万年前のことです.現在も激しい地殻変動で知られる日本列島ですが,この時代には,現在の変動速度の数倍以上に達する激烈な地殻変動が起こっていたのです.
土佐清水のほぼ中央部には,こうした時代に堆積した地層(三崎層群)が広がっています.竜串や見残しの奇岩でも知られるこの地層には,大地の活発な変動や激しい古環境のもとで暮らしていた生き物たちの痕跡が良く記録されていることがわかっています.この講座では,この激動の地球史の一端について,豊富な図や写真を用いてわかりやすく解説したいと思います.
奈良正和教授
高知大学 土佐清水ジオパーク推進協議会顧問
講師略歴
浅い海で堆積した地層とそこに含まれる生痕化石の研究により学位を取得.通商産業省工業技術院地質調査所(当時)での科学技術特別研究員,愛媛大学教員をへて高知大学へ.2017年より現職.2012年に「浅海性生痕化石の古生態学的研究」で日本古生物学会学術賞を受賞.2015年から土佐清水ジオパーク推進協議会顧問.
土佐清水ジオパークの魅力と展望
土佐清水は古くは漁業で、近年は観光業で栄えてきた街として,地域が持続的に発展するためのポテンシャルがあります。地域の価値・魅力をどのように活用し,どのように行動するのがよいかについてお話しします.
宮原育子教授
宮城学院女子大学 宮城大学名誉教授
講師略歴
旅行会社に勤務後,大学では自然地理学を学び,高山帯の植生の研究により学位取得.宮城大学教授を経て現職に.地域資源を活かした観光まちづくりが研究テーマ.2020年から日本ジオパーク委員会副委員長.2021年の土佐清水ジオパーク新規認定審査の際の現地調査員を務める.
次第
会場 土佐清水市立中央公民館
☆関連イベント その1
日本列島の姿が現在の形になりつつあった頃,わずか数百万年の間に3000mもの厚さとなった三崎層群.この時代の干潟をはじめとした海岸環境とそこに暮らす生物たちの営みを,実際に地層を見て触って探ります.
案内:高知大学理工学部 奈良正和教授
- 本イベントでは小型船で弁天島に渡り(片道15分程度),島内では足場の悪い海岸の岩場を歩きます.従いまして,参加者は他者の補助を受けることなく岩場での下船・歩行ができる方に限らせていただきます.
- 希望者多数の場合は抽選することとし,結果については9月12日以降個別に連絡いたします.
- 参加費は当日お支払いください.
- 弁天島への渡船可否は当日集合場所にて判断します.
- 本イベント参加に係る傷害保険は土佐清水ジオパーク推進協議会が加入します.
集合場所
電話:0880-87-9590
メール:geopark@city.tosashimizu.lg.jp (@は半角@に変えてください)
募集期間:2022年8月1日(月)~9月9日(金)17:00
土佐清水ジオパーク推進協議会事務局(竜串ビジターセンター内)
〒787-0450 高知県土佐清水市三崎字今芝4032-2
☆関連イベント その2
土佐清水ジオパーク推進協議会の助成事業による土佐清水ジオパークのエリアを対象とした調査研究が2018年度から実施されています.数々の研究の成果をまとめて報告します.
発表内容
発表者:斉藤知己 高知大学総合研究センター
要旨:
足摺岬周辺の大陸斜面上には約2万年前に形成されたとされる海底谷群が存在する。本研究では土佐湾西部海域の生物生産メカニズムの一端を明らかにすることを目的とし,四万十海底谷での沿岸湧昇による周辺海域への栄養供給が,その基礎生産の維持・向上に果たす役割と海洋生態系における基盤生物である動植物プランクトン・魚類の分布におよぼす影響を調べる。
一覧へ
発表者:瀬尾明弘 (公財)高知県牧野記念財団
要旨:
マルバテイショウソウは四国(高知県のみ)および九州,中国南部・台湾に分布するキク科多年生草本である。高知県での分布は 1978 年に初めて確認されたものの,土佐清水市以外での生育は確認されていない。九州においても生育地は点々としており,環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU),高知県では絶滅危惧ⅠA 類(CR)に指定されている。
本活動において,高知県唯一の分布が知られている地域へ 2016 年以降に移植されたマルバテイショウソウ個体群周辺における新規個体の分布を記録し,移植個体群への新規個体の増加がどのようになっているかを明らかにした。
一覧へ
発表者:上森教慈 九州大学大学院
要旨:
有剣ハチは送粉、食物網の制御、天敵防除など、生態系の維持や農林業などの人間活動において重要な役割を果たしている。本調査では、土佐清水市の森林における有剣ハチ群集の評価を行った。6、8、10月の調査により67種374個体を採集した。また、土佐清水市の森林の有剣ハチは地点によって種構成が異なっており、狭い範囲でも複数種が棲み分けられるほど多様な森林環境が存在することが明らかになった。
一覧へ
発表者:嶋田侑眞 (国研)産業技術総合研究所
要旨:
大岐地区に残された湿地において,ハンドコアラーやジオスライサーと呼ばれる道具を用いた人力の掘削調査を行いました.その結果,湿地の地層中に,過去の津波によって浸水したことを示す「津波堆積物」という砂の層を見つけることができました.放射性炭素年代という手法で地層の堆積年代を推定したところ,この津波堆積物が南海トラフ沿いで発生した歴史上の津波のうち,1361年または1498年の津波に対応する可能性が示されました.
一覧へ
発表者:羽地俊樹 (国研)産業技術総合研究所
要旨:土佐清水ジオパークの三崎層群では,近年,堆積学的な研究が進められ,堆積環境の実態が明らかになってきた.しかしながら構造地質学的研究例は少なく,地層の定置後の変形史は未解明であった.そこで発表者は,昨年度から変形史の解明に向けて,小断層や鉱物脈などの変形を示す小構造を対象に調査を開始した.本発表では,三崎層群に見られる小構造や小構造を用いた研究手法について紹介する.
一覧へ
発表者:西沢志穂・山本由弦 神戸大学大学院理学研究科
要旨:
三崎層群全域で検討した最高被熱温度は,千尋岬付近の竜串層/浜益野層境界で急減する.この特徴的な分布は,花崗岩貫入によるものと考えられる.さらに,熱伝導率(熱の伝えやすさ)は,岩相・岩種に依存することから,この温度分布は花崗岩からの距離と岩相の変化に規制されていると言える.これらのデータを基に,被熱計算を実施し,本地域の地史を詳細に明らかにしたい.時間が許せば,研究の過程で発見した泥ダイアピルの露頭についても紹介する.
一覧へ