8/22開催|シュノーケリングで爪白石柱群を覗いてみよう!
更新日:2020.9.14
2020年8月22日にJAMSTECの谷川先生を招いて行ったイベント「幻の黒田郡伝承?シュノーケリングで爪白石柱群を覗いてみよう」のレポートです。
地震により一夜にして水没した幻の村「黒田郡(くろだごおり)」の伝承をご存知でしょうか。黒田郡とは、684年に起きた白鳳地震により一夜にして海に沈んだといわれる伝説の集落。高知県の沿岸部には、地震によって水没した集落の伝承や、海底に沈んでいる人工物の情報が各地に残されています。黒田郡とは、さながら、高知のアトランティス大陸とも言える失われた伝説の集落なのです。
この黒田郡を地球科学の視点から研究をしているのが、 JAMSTECこと海洋開発研究機構と高知大学による「黒田郡プロジェクト」です。
海と地球の不思議に挑み、私たちをいつもワクワクさせてくれるあのJAMSTECが黒田郡について研究しているのです!
▶︎JAMSTECって何だ?という方はこちら(JAMSTEC YouTubeチャンネル)を見てね。地球最後のフロンティアとも言われる深海や、私たちの足下の地球のことを研究開発している国の機関。あの有人潜水調査船しんかい6500などを用いて、私たちに未知なる世界を見せてくれ、夢と好奇心で満たしてくれる研究を行っているよ!
ここ、土佐清水においても、爪白の海底に石柱があることがかねてより知られており、「幻の黒田郡伝承か?」と囁かれていました。
(写真提供:竜串ダイビングセンター)
introduction
ことの発端は、高知新聞に掲載されていた黒田郡伝承にまつわる記事。たまたま、この記事を今回講演をしていただいた谷川先生たちが読んだことから、この研究がはじまりました。実際、一晩で集落が海底に沈むような地盤の沈下が起こるということは、常識的には考えにくく、当初、谷川先生も、「嘘だろ。」と思ったとのこと。しかし、谷川先生たちは、これに対し、何もせずに「あり得ない」と否定するのではなく、科学的なアプローチから検証を試みました。
「あり得ない」と否定することは簡単ですが、もしこの伝承が本当だとするならば、私たちは歴史から学び、必ずまた来る南海地震の際にも同様のことが起こる事を想定して防災対策をしなければなりません。
伝承と侮るなかれ、黒田郡の謎を解き明かすことで、将来起こりうる南海トラフ地震のメカニズムを明らかにできる可能性があるのです!
本当に黒田郡は実在したか?どこにあり、いつ沈んだのか?どのような規模の地震が起きたのか?これらの疑問に、考古学的な視点に加えて科学的な視点から応えたいという熱い想いで黒田郡プロジェクトは始動しました。
そして、昨年、ここ爪白の石柱にかかわる研究成果が発表され、私たちは色めきたちました。
➖こんなロマン溢れる石柱群が、すぐ近くの爪白海岸にあるらしい!
➖しかも、泳いで行ける距離のところにあるらしい!
だったら、シュノーケリングで見てみよう!
JAMSTECの研究者とシュノーケリングで海に行けるなんて、最高じゃん!
と、このイベントの企画がはじまったのです。
サイエンストーク
そして、始まったこの日のイベント。
この日ご講演いただいた谷川亘先生は、この黒田郡プロジェクトの中心メンバー。
谷川先生は地質学がご専門で、京都大学博士課程を修了後、JAMSTEC一筋、高知コア研究所で最先端の研究に挑んでいる。
谷川先生が所属しているのは、超先鋭研究開発部門という部署で、その名のとおり、独創的で、挑戦的、アヴァンギャルドな研究を行っている。そう、そこで行われている研究こそ、私たちに見たことのない景色を見せてくれ、私たちを夢とロマンと好奇心で満たしてくれるのだ!(←ほとばしるJAMSTEC愛。)
JAMSTECの超先鋭研究開発部門については
▶︎こちらのYouTubeチャンネル(シンカイ探偵団)をチェック!
午前中は、谷川先生によるサイエンストーク。
爪白海岸の海底で見つかった石柱はどうして海にあるのか?その理由は以下の3つの可能性が考えられます。
①陸上物が地震や海水準変動で水没した
②陸上物が津波や災害で海中へ運搬された
③船荷が水没または廃棄された
答えの謎については、まだはっきりと解明されていませんが、詳細な検討を行った結果②の可能性が十分にあるという結論に。
谷川先生たちの研究によって、この石柱たちは、684年の白鳳地震により沈んだものではなく、1700〜1800年代に起こった津波や嵐によって近くの爪白集落から流されたものではないかという結果がわかってきました。
石柱の組成を科学的に調べることだけでなく、三崎の採石場のことや、石の加工方法、当時の海運の状況など、谷川先生たちは、地域に入り、各方面から調査を行いました。
そして、物言わぬ石柱の記憶を少しずつ、聞き出してくれ、私たちに石柱の記憶を教えてくれました。
シュノーケリング
そして午後は、お待ちかねのフィールドワークのシュノーケリング。
なんと、これまで見つかっていなかった花崗岩の石柱が浜辺の砂利から顔を出していました。
今後、この花崗岩も谷川先生たちは調べるそう。
今回偶然にも見つかったこの花崗岩の石柱が、新たな発見の手がかりになるかもしれないですね。
そして、シュノーケリングに繰り出します。
石柱が見られるのは、爪白海岸と弁天島の間、浜からほんの50mくらい先です。
海底館もすぐ近くに見えるあたりにあります。
石柱です。海面からでも肉眼で確認できるくらいくっきりと見えました。
シュノーケリングや素潜りに慣れている方だと、潜って手が届くくらいのところに石柱があります。(この日は海面から4mくらいでした。)
当日の様子をドローンで上空から撮影しました。
そして、海の中の様子を高知コア研究所のスタッフさんがアクションカメラを装着して撮影してくれました。
決死の?ダイブにより、海底の石柱もバッチリカメラに納められています。
この日は、お天気が心配されましたが、荒れることもなく、石柱や海中のサンゴや魚などの生き物をバッチリ観察することができました。
そう、ここ爪白海岸は石柱だけでなく、浜辺のすぐ近くにサンゴ礁があり、海の生き物もたくさん観察することができるのです。海中の様子はこんな感じ。
クマノミとイソギンチャク
サンゴとおさかな
最後に、参加者の皆さんとドローンで記念撮影
知る人ぞ知る存在だった爪白海岸の石柱群。
彼らは、災害の歴史だけでなく、当時の地域文化なんかまでも教えてくれるロマン溢れる存在です。今後、ジオパークの学習やジオツアーなどにも活用していきたいものです。
JAMSTECの皆さん、関係者の皆さん、そして、参加者の皆さん、楽しい時間をどうもありがとうございました。
▶︎谷川先生たちが爪白の海中から引き揚げて調査した石柱は、竜串ビジターセンターうみのわに展示しています。
▼今回訪れた石柱の場所はだいたいこのあたり。
近くだと、シャワーはスノーピーク土佐清水キャンプフィールドのシャワー(10分200円)が使用できます。
サンゴ礁の生き物とロマン溢れる石柱のどちらも見られる穴場スポットの爪白海岸。
ぜひ、シュノーケリングで海底を覗いてみてください。
確実に見たいという方はダイビングもおすすめ。
ぜひ、体験してみてください。
竜串ビジターセンターうみのわと土佐清水ジオパーク推進協議会は、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいます。