土佐清水を自由研究する地域研究紙≪アオサバラボ≫

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研究ノート

松尾のアコウ自生地

足摺半島、松尾地区の天満宮にある、大きな木をご存じでしょうか。樹齢300年を超えるアコウの大樹です。このアコウの大樹、約100年前に、佐田岬半島のアコウと一緒に、四国で初めて、国の天然記念物のひとつとして指定されました。この2件のアコウの縁で、この度、佐田岬半島ミュージアムさんと「アコウ同盟」を結成!

見上げるほど大きく、少し不思議なたたずまいをしたアコウたち。長い間この地に暮らしながら、どんなことを考えているのでしょうか・・・。松尾のアコウ、佐田岬半島のアコウ、それぞれのアコウの気持ちになって(?!)紹介する特別コラム企画です!

・佐田岬半島のアコウはこちら(佐田岬半島ミュージアムのHPへ移動します)


松尾のアコウ

ワシは松尾のアコウ。四国の南のはしっこ、足摺半島の松尾地区に生えている。ワシらアコウは暖かいところが好きだから、足摺半島はとても暮らしやすいよ。松尾の地区だけでも、浜に生えている「石抱きアコウ」や漁港の「海老洞」のところに生えているのアコウなど、仲間がたくさんいる。その昔、吉井さんという先生が四国の植物を調べに来て、ワシや他のアコウたちのことも記録に書いてくれたんじゃ。

ワシらはテンネンキネンブツというものに指定されておってな、大きくて立派だという理由だけじゃなくて、アコウの暮らし方がよくわかるよい見本だ、ということで選ばれたんじゃ。そうそう、四国の西のはしっこ、愛媛県伊方町にはワシの友人「三崎のアコウ」がおるんじゃが、そいつも、一緒にテンネンキネンブツに指定された、いわば同期じゃな。

ワシを見て、なんとも太い幹だ、と思ったかな。実はこれは幹ではなく「気根」という根が何本も絡み合ったものなんじゃ。

実はな、ワシらは地面から芽を出すわけじゃないんじゃ。他の木の上で芽を出すんじゃよ。ワシらアコウは果物のイチジクと同じ仲間でおいしい実がなるんじゃ。その実を食べた鳥が他の木の上に種子を落として、そこから芽を出すんじゃよ。植物の食事は日光じゃから、空に近いとたくさん食事ができてうれしいわけじゃ。いわば肩車してもらっているようなものじゃな。でも、水は必要だから、ワシらアコウは木の上で芽を出したら、そこから「気根」という根っこを地面に向けて何本も伸ばしていくんじゃ。この気根というのは便利なやつでな、地面から水も吸い上げられるし、頑丈でしっかりからだを支えてくれるんじゃ。ただ、ワシらが成長して気根をたくさんおろしていくと、肩車してくれていたもとの木を絞めあげてしまって、最終的にはもとの木が枯れてしまう。ひどい話だ、と思う方もおられるじゃろうが、ワシらアコウが生きていくための方法なんじゃよ。どんな植物も動物も、それぞれ工夫した方法で精いっぱい生きていて、生きるうえで他の生き物を食べたり、死なせたりということもあるけれども、それも自然の一部だということ、知っておいてほしいな。

ワシが生えているところは天満宮の境内で、昔から地区の人をはじめ、みんなが大事にしてくれた。ありがとう。これからも温かく見守ってくれたらうれしいな。