土佐清水を自由研究する地域研究紙≪アオサバラボ≫

土佐清水を自由研究する地域研究紙≪アオサバラボ≫

土佐清水を自由研究する地域研究紙≪アオサバラボ≫

土佐清水を自由研究する地域研究紙≪アオサバラボ≫

土佐清水を自由研究する地域研究紙≪アオサバラボ≫

研究ノート

漁師町のお祭り|鹿島神社大祭へ行く

更新日:2020.2.19


※2021年2月の鹿島神社大祭はコロナウイルス感染症対策のため、中止となりました。


鹿島神社大祭という漁師町らしいお祭りが土佐清水にはある。
春と秋の年2回行われ、海への感謝が捧げられる。
イキのいい若者たちが舟唄を奉納し、御輿をかついで街中を練り歩き、祭りのシメには御輿を載せた船と漁船が湾をぐるりとパレードして見せ、その勇壮な様は圧巻。鹿島のお祭り②.jpg
↑鹿島神社の鳥居の前にある桟橋から船に三体の御輿をのせ、岸へと運ぶ。


漁師町、土佐清水の港がひときわ賑わうのが、毎年2月と10月の第3日曜日におこなわれる鹿島神社大祭の日だ。

祭の朝、鹿島神社の本殿に神官、市街地各地区の区長や総代、神輿の担ぎ手である若い衆、巫女や稚児が集い、祭りが始まる。
鰹節をあてに酒を酌み交わした後、若い衆が舟唄を歌い、やがて本殿の扉が閉じられる。
飾り付けた神輿に「神移し」が行われると、男たちは俯きながら、よりたくましく舟唄を歌い、三体の神輿に神が移るのを待つ。
三体の神輿は鹿島神社と天満宮、本清水神社のものだ。

やがて、神様が神輿に移ると三体の神輿は運び出され、64段ある急な階段を下った先にある桟橋をめざす。
海で待つのは、太い縄で結わえられた二隻の漁船—神輿船だ。
今では地続きの鹿島だが、かつてここが島であった時代のままに、神輿を積み込んだ船はゆっくりと船着き場を離れ、島の裏にある港へ。
そこでまた神輿を積み下ろし、それぞれゆかりの町内をめぐっていく。
鹿島のお祭り③.jpg途中いくつかある御旅所(おたびしょ)で神輿を鎮座させると、手際よく賽銭箱と筵(むしろ)が敷きならべられ、氏子たちが静かに手を合わせる。
地域の人々からの振る舞いも受けながら休憩し、その都度男衆は舟唄を捧げる。
また、御旅所には竹の先に白い御幣(ごへい)がつけられた「廻り竹」が置かれていて、神輿はこれを中心に三周廻る。
豊漁招きのご利益があるといわれるその御幣をかつては氏子たちが奪いあったが、現在では平和的に配分される。

おもしろいのは、町内のところどころで家から神輿を詣でに出てきた人々と、神輿が織り成す「ちょっとした儀式」だ。
近所の人々が列をなして腰をかがめると、神輿は人々の頭の上を一気に通過する。
無病息災のご利益があるとされ、このときばかりはみんなが笑顔になる。

昼過ぎ、最後の御旅所である戎町に神輿が揃うと、再び神事がはじまる。
ここでは三体の神輿に神棚が飾られ、神官が祝詞を奏上し、巫女が「浦安の舞」を奉納し、玉串を捧げる。
そしてまた、男衆による舟唄。−厳かに、だけど勇壮に。
なんとも漁師町らしい祭りだ。
鹿島のお祭り①.jpg全ての神事が終わる頃、港内にはお供舟として20隻近い漁船や遊漁船が集いはじめる。
この祭りのクライマックスともいえる、海上パレードのはじまりだ。
すべての神輿がふたたび船に積み込まれると、たくさんのお供舟を引き連れた神輿船が清水湾内を三周してみせてくれる。
舳先に立つ男は、櫂(かい)を振りまわす櫂踊りを舞う。

そして、祭りもいよいよ終わる。
一日の旅を終えた神輿を積んだ船が鹿島に戻ってくると、
若者たちが続々と海へ飛び込み、岸壁へと船を導く役割を務める。
船から降ろされた神輿が本殿に戻り、最後の舟唄が歌われて神様にお戻りいただくと、祭りは終わる。

男衆たちはハッピ姿のまま連れ立ってまちへ戻り、区長や総代たちは市街地の集会所に集い、「直会(なおらい)」といわれる格式高い打ち上げを行い、そのまま無礼講の饗宴に移る。

それは、祭りから日常に戻るための夜の時間。

漁師町に、日常がまた戻ってくる。

(地域研究誌AOSABA LABOより)


鹿島神社大祭のあれこれ

舟唄

鹿島_舟唄.png
本祭の1週間前に行われる御籤祭(みくじまつり/ くじを引いて、御輿船を決める儀式を行う)や宵宮(「よいみや」もしくは「よみや」/ 祭りの前日に神社にて祈りを捧げる)、そして祭りの間中、いたるところで歌われるのが、「舟唄」。歌詞の内容は海の神様たちへの賛美だが、聞き取るのは至難のわざだ。
3人の「親」が一番から三番までを交代で歌い、その他全員の「子」が掛け声を歌う。


御輿船

鹿島_御輿船.png
神輿をのせて海上を疾走する船は、漁船を二隻くくりつけたうえ五色の幕や大漁旗、吹き流しで飾り付けられる。本祭1週間前の御籤祭(みくじまつり)で行われる儀式では、神官によってクジが引かれ、栄えある神輿船となる漁船が二隻選ばれる。


御輿と御旅所

鹿島_御輿.png10月に行われる秋祭りでは鹿島・天神・香取の神輿三社、2月の春祭りでは鹿島と香取の二社が繰り出す。写真は秋のもので、左から天神、鹿島、香取。例年5ケ所ほど設けられる御旅所では神輿を鎮座させ、近所の人々が詣りに来る。特に当家(とうや)となった地区では、酒やつまみが盛大にふるまわれる。


御輿くぐり

鹿島_御輿くぐり.png

神輿行列のいく先々で、人々が腰をかがめ、列をなす。神輿はその列の上を通過し、最後にそれぞれの地区の区長が手に持った金幣(きんぺい)でお祓いをする。無病息災のご利益があるとされ、誰もが笑顔になるひととき。


祝詞奏上

鹿島_祝詞奏上.png

最後の御旅所では、神棚に酒や野菜、果物などが供えられ、神官が畏み畏みと祝詞をあげる。


浦安の舞

鹿島_巫女.png

祈祷ののち、例年は4人の中学生からなる巫女が舞いを奉納。前半は扇の舞、後半は鈴の舞の順番に演じられ、雅なひと時が流れる。


稚児

鹿島_稚児.png

子どもはまだ穢れを得ていないため、神霊が宿るとされ、お祭りには重要な役割を担う。かわいらしい衣装で練り歩き、巫女と共に祭りに華を添える存在。


Information

鹿島神社大祭
開催日:毎年2月と10月の第3日曜日に土佐清水市鹿島神社にて開催
9:00頃から御輿は鹿島を神社を出て、市街地を練り歩き、15:00頃から戎町から御輿船のパレードがはじまる。